ずっと昔、骨折して入院していた病院は、たしか夜間入り口が一晩中開いていたと記憶しています。
私の病室は2階で、夜間入り口近くの階段を上ってすぐのところにあったので、歩けない状態だった私は、「もしも暴漢が入って来ても逃げられない…」と、いらぬ心配をしたものでした。
ところで、父が亡くなった病院の夜間入り口は、病院の端のほうにひっそりとあって、インターホンを鳴らすと中から鍵を開けてくれるんです。
危篤の連絡を受け、早朝に病院に行って、その後わりとすぐに父は息を引き取ったので、葬儀社の人が来るまで、いったん家に戻ることにしたわけですが。
その時間も、まだ玄関は開いていなくて、夜間入り口から出ることにしました。
ところが、当然鍵はかかっているし、人気はないし、窓口のようなものもなく、どこに行って言えば開けてもらえるのかがわかりません。
母が、ドアの横にある、火災の際に何かに使うらしいレバーを、「これじゃないの?」と回そうとするので、「違うよ!」と慌てて止めたりしつつ。
誰かいないかとうろうろしていたら清掃業務の女性がいたので、「すいません」と声をかけたら、何も聞かないうちから「いやいやいや、私掃除の人なんで」と、なぜか激しく怯えられ…
途方に暮れかけたところに看護師が通りかかり、事情を話したところ、係の人に知らせてくれ、ようやく外に出ることができました。
長年病院をやっていて、今まで夜間に外に出る人がいなかったはずもないだろうに、ずいぶん不親切というか、いい加減というか、なんでわかるようにしておかないのかなあと思いました。
私も母も、父の死に対しては冷静だったのでまだよかったですが、動揺して嘆き悲しんでいる人が同じ境遇になったらと思うと…